関東の寺院の山門(仁王門)に見られる茅葺き型銅板屋根の一考察(その2)

注)ここに掲載されている全ての画像は、大熊板金の施工したものではなく他社の施工事例です。
このページでは、「関東の」「寺院の」「山門(仁王門)の」茅葺き型銅板葺きの原型である、茅葺き屋根の画像を掲載します。
あくまで「切り妻造り」または「入り母屋造り」の妻側上部の納まりを見るという限定の考察です。

参考資料
民家の茅葺き屋根
は地域によって様々なの納まりがあり、地域を超えて見られる事はありません。 
各地の茅葺き民家を集めた、例えば川崎市立民家園のような場合は別です。棟の画像は全てこの民家園で2010/05/03 に撮影したものです。
ちなみにの納まりには次のような種類があります。
1.こうがい棟   こうがいとは簪(かんざし)の事で、棟の下に何本かの横木を入れておき、そこに棟を止めた紐を結わいて固定する形式です。
         主に日本海側から西日本に見られます。
2.針目覆棟    棟自体が三角で高く、縫い止めた棟の上に束にした杉皮を三角棟の頂点で折って止めてある関西でよく見られるやり方です。
3.芝棟(クレグシ)クレとは土の事でグシとは棟の事です。棟を粘土質のクレで固め、その上に土を入れてゆり・いわひば等を植え、
         植物の根で棟をおさえるやり方です。東北地方でしか見られません。
4.瓦覆い棟    関東でも散見される、丸棟に瓦を被せるやり方です。お寺の銅屋根にもこの形を模した例があります。横浜市弘明寺1. 2.
5.置き千木棟   X型にクロスさせた大きな部材の千木をかなりの数載せて、その重さで三角棟の杉皮を固定する形式です。
         西日本に多いですが、山間部では意外と関東にも散見されます。
6
.丸くて薄い丸棟→竹す巻き棟 竹でスノコを編んだ横に太い竹を縛って止めた棟。頂点には竹の代りに無垢の木を載せる場合もあります。
 これが関東風で、茅葺き型銅板葺きの棟も全てこの形式です。



栃木県真岡市(旧芳賀郡二宮町 平成21年3月23日真岡市に編入) 親鸞の草庵から発展した専修寺(せんじゅじ)に唯一現存する建立時の総門。
1998/03/08撮影 国指定重要文化財 


千葉県取手市 旧取手宿本陣(染野家) 染野家は代々取手宿の名主を務めた家柄で貞享4年(1687)に水戸徳川家から本陣に指定される。
1998/0927撮影 (ほぼ葺き替え直後の茅葺き屋根)  茨城県指定文化財

東京都青梅市 塩船観音仁王門 寿永三年(1187)の建立。国指定重要文化財
1994/07/31撮影 (2007年の葺き替え前の状況、この時点でも妻側上部の納まりが良く分かる)


東京都青梅市 明白寺山門 建築年代は明らかではないが、青梅市内に現存する山門で最も古い形を残す。青梅市指定文化財
2009/04/26撮影 (茅葺きというより杉皮葺きと言っても良いほど杉皮が多用されている)


参考に掲載した茅葺き屋根の3例目と4例目の妻上部の納まり(刈り込み)は、青梅周辺のいわゆる三多摩地域と埼玉県側の奥武蔵や秩父の一部をも含む地域で見られる形です。
これを便宜上「青梅型」(このサイトでの名称で、建築学会や文化財関係者に認知されたものでは無い)とします。
その特徴は
1.
妻側箕甲の先端が最上部に至って釣り針状に返り
2.左右の先端が合体した部分が一部陥没し、
3. その上をさらに銀杏型に深く刈り込んで棟の先端に繋げてある。

この「青梅型」
はこの地域だけの特有のものだと言ってしまえば話は簡単なのですが、その余りに独創的で精緻な納まりは、「関東の」「寺院の」「山門(仁王門)の」という限定条件の中で、
茅葺き屋根を銅板に葺き替える場合にその原型となり、青梅・三多摩地域から関東一円への広がりを見せています。