関東の寺院の山門(仁王門)に見られる茅葺き型銅板屋根の一考察(その6-2)

(注)ここに掲載されている全ての銅屋根の画像は、大熊板金が実際に施工したものです。

広徳寺 二王門(通例は仁王門と表示しますが監理者の報告書が二王門となっているのでこのページではこう表示します)
三間一戸の楼門 屋根は茅葺き型銅板葺き入母屋造り

さて本題の「関東の寺院の仁王門に見られる茅葺き型銅板屋根の一考察(その6-2)」に入ります。
(1)工事経過 2005年11〜12月まで二王門の現状調査、2006年4月まで調査報告書作成、2007年3月31日起工式、2008年10月4日落慶式
(2)施工会社 総合監理 一級建築士事務所(有)リョウ建築事務所、設計施工 株式会社 島村工業(上尾市)、大工工事(有)荒木社寺設計(秩父市)、板金工事(有)大熊板金(蕨市)
(3)「監理者」による調査報告書によって明確になった二王門の建立年代
 寺伝に依りますと、今回解体修理した二王門は、正保年間(1644〜1648)・享保年間(1716〜1735)の再度の火災により、大御堂、二王門を除き焼失とありますから、
 以下に掲載する二王門は少なくとも正保以前に既に建立されていたと考えられます。
 報告書の抜粋
  1. 作者・ 武州大里郡上吉見領小泉村 小暮吉兵衛 の墨書きを発見。
  2. 製作年代・ 宝永6年(1709)の墨書きを発見。
    *上記に関しては、本来の棟札/小屋梁/小屋束等に書かれた物ではなく、間斗束の裏/隅木及び欄干差込部の陰部での記述であることから、上記は改築時点の記述であり、
     本体はそれ以前に存在していたと考えられ、前述の寺史から正保(1644〜1648)年間以前、即ち江戸初期の作と推察するのが妥当だと思う。

(4)改築前の画像
国内城郭のデータベースを構築されている「帝國博物学協会 城郭研究部」様の美尾屋十郎廣徳館
掲載された右の画像の掲載の許可を戴きました。
(5)改築(解体修理)で一時的に山門が無くなった状態→こちら(2008/02/08撮影)
(6)この考察で「青梅型」の青梅市と、(その5)で施工したさいたま市と、今回の(その6-2)の
川島町との位置関係は、右のような三角形になります。


銅板屋根葺き上げ完成後、10ヶ月経過の状況 2009/04/30 撮影

同じ茅葺きの入母屋では、屋根はどのような形に葺いてあるか、参考の為に以下に2例示します。

栃木県益子町 西明寺 楼門
国指定重文
室町時代 明応元年(1492)
1994/10/23 撮影

17年後正面側の現状
2011/03/02 撮影

茨城県潮来市 長勝寺 本堂
茨城県指定文化財
建立年代は詳らかでないが
細部に桃山時代の様式が見られる
1994/10/02 撮影
(大棟は、本堂という事で
鬼板付きの銅板葺きに改修
されたと思われる)

サムネイル画像だけでも一目で違いが分かるのが、四方の降り(くだり)棟です。茅葺きでは起くっているのに対し、銅板では逆に照って(反り上がる)います。
(その6-1)の考察したように、茅葺き屋根の形そのものを銅板葺きで再現しようとすると、見た事も無い(社寺建築のイメージにそぐわない)格好に成りかねません。
四方の軒先(隅木の上)から破風尻(妻側の箕甲の一番下)へ緩やかに反る弧が、そのまま箕甲に連なるという一体となった「弧」となる(→こちらの黄色い点)
のが、入母屋造りの見所なのです!

次に、広徳寺二王門の銅屋根工事が完成するまでをまとめてみました。
左の画像をクリックすると、フォトアルバムのインデックスページへ行きます。
それぞれの画像をクリックすると、長辺800ピクセルの本画像が表示され、
その画像のコメントも入れてあります。
本画像ページの左上に 戻る ホーム 次へ の「次へ」をクリックし続ければ
セルフスライドショーになります。
この場合の ホーム とは、インデックスページの事です。


さて結論ですが・・・(その6-1)でまとめてしまってありました。
茅葺き屋根に携わる皆さんにとってはとんでもない商売敵でしょうが、これまでの考察を見ていただければ、茅葺き屋根に対するリスペクトと深い愛情!をご理解戴けると存じます。
また当該地域以外の関係者の皆さんには「一体、何をここまで?」という疑問があるでしょうが、あくまで「関東の寺院の山門(仁王門)に見られる茅葺き型銅板屋根の一考察」
という限定されたものです。
哀しい事に、銅板葺きのオリジナルという形はありません。(敢えて言えば、創建時からそうであった細い瓦棒葺きが、植物素材や瓦以外の銅板オリジナルかもしれません)
銅板はどんな形にも葺けます。葺き替えの場合はあくまでオリジナルの形を尊重しながら且つ、雨仕舞いと装飾性を勘案し、尚且つ植物素材よりも長い耐久性があるという
特徴を活かしながら、設計者/工務店様と協力し最善の形に銅屋根を施工するという信念で、これからもやっていきたいと存じます。
一冊の本にも匹敵する長い考察を読んで戴き、大変ありがとうございました。
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